SOUND・BOND
「真空ちゃんは何にするのお?」
待たせているウエイターを横目で見た光が促す。ただ、少年は空腹に耐えかねたのだろうと陸燈は思ったが、事実彼の年齢は少年という部類には入らないし、早くお腹に何かを収めたくてという理由で言ったのではもちろんないだろう。
「さすがは年長者!期待してるぜ」
笑顔でからかう秋司。
「おいAKI……。途中まで褒めといて主旨変えたね――僕に奢らせようとしてんな?」
「違うのか?」
「……たく、しょうがないなぁ」
今回だけな?と肩を落としてぼやく光を、これで年輩?自分と同じかもっと下かと……?と陸燈はまじまじ見つめた。
この疑問を持つことは誰もが通る道。
「ん?なんだ??」
陸燈の視線に気付いた光が、視線を合わせてくる。
それを逸らすことなく陸燈は呟いた。
「いや……年長者って……?」
「やっぱり光!可愛いってさ」
「ちっがうだろ!」
ちゃかす秋司に光は睨む。
とりあえず注文を済ませてウエイターが立ち去った後に続ける。
「光は見た目は中学生くらいにしか見えないけど、これでも俺たちよりひとつ上なんだ」
「これでもってなあ!」
「まあまあ、最後まで聞けって」
秋司は光に苦笑いを向けて続ける。
「あ、俺とタキは同い年で幼馴染みだ。光と出会ったのは俺たちが高校を卒業した後、ルソワールでだった」
「俺たちは函館から出てきたんだよ。今日こっちに来たばかりで、光の実家が東京にあるから、そこで世話になってる」
と薫季が補足する。