SOUND・BOND
「光はムードメーカーだからな。まだまだ少年心を忘れていないところを高く評価しているわけ」
「それって褒めてんのか?」
「もちろん」
相変わらずな笑顔を向ける秋司。それを胡散臭そうに光はムッと顔を顰める。
彼らはいつもこんな感じで馴れ合っているのだろうか。陸燈は自分には無い仲間と言える存在に、何処か疑問を感じながら眺めていた。
客が少ないせいか、他愛の無い話を聞いているところに数分前に注文したメニューが早々に運ばれてきた。
持って来たのはさっきのウエイター。
ほのかに漂う紅茶の香りと甘い匂いが鼻をくすぐる。
「うわ~。おいしそ~!」
陸燈の目の前を通過して、隣に行儀(ギョウギ)良く座っている真空の前に置かれたものは、匂いだけでなく見るからに甘ったるそうな苺パフェ。
それを目の前にして少女は嬉しそうにはしゃいでいる。
その姿を見て微笑ましく思う反面、グラスタイプの器に明らかに収まり切っていない苺シロップのたっぷりかかった生クリームやアイスを、こんな夜更けによく食べられたものだと、見ているだけでお腹が膨れそうなそれに陸燈はキレイな眉を僅かに寄せた。
「陸燈は甘いものダメなのか?」
きっと顰めた表情を見ていたのだろう薫季が、紅茶にレモンを数滴垂らしながら問う。紅茶というよりもブラックコーヒーが似合いそうな彼だが、レモンを握る姿もなかなかさまになっていた。
「いや、まあ嫌いではないけどあまり食べたいとは思わないな」
「ま、甘いものは可愛い子が好んで食べるっていうからな」