SOUND・BOND
頬杖の手から少し浮かせて、秋司はオーダーした自分の飲み物をウエイターから受け取りながらも視線は光へ。
「なんで僕を見んのさ?!」
「現実を見ているだけだけど?」
現実――光の前に置かれたメニューは、ショコラケーキに真っ赤な苺の載ったショートケーキ。2つが綺麗な模様の皿に並んでいる。
癖のあるまばらな髪を後頭部でかるく縛っているお陰で、大きな瞳と小顔がはっきり強調され可愛らしさが増しているように思う。そこへショートケーキとくれば似合わないはずがない。
「そりゃ、僕は小さいけど可愛いってのは違うだろ?!」
「あ~そろそろ、自覚した方がいいんじゃないか?」
「なんだよ、それ……?」
秋司は苦笑まじりに肩を竦める。持ち上げられた口元はからかいの色が覗いていた。
そうは言え、年長者の光に対しこの扱いは失礼といえばそうだが、彼自身簡単に乗せられ流されている辺り、これが自然なのだろうと陸燈は感じた。
隣では夢中でパフェへスプーンを突っ込む真剣な面持ちの妹の姿がある。
「おーい。談笑しに来たんじゃないんだから――AKI、話進めろよ」
ティーカップに指を絡めながら薫季は促した。
ようやく本題に入る様子に、陸燈は嘆息(タンソク)する。
外からは、さっきまでは殆ど聞こえなかった雨音が今は微かに聞こえる。しかし店内にゆっくり流れるBGMのお陰か、それほど煩わしくは無い。
「そうでした」
秋司はテーブルに突いていた肘を引いて両手の指を絡める。視線は光、薫季、そして真空を越えて陸燈に向けられた。それを陸燈は軽く横目で受ける。