SOUND・BOND


「録ったものはあるのか?」
 

生演奏でなくとも録音したものがあればいい。それを聴いて納得ができれば彼らの話をきいてやっても構わない。
 
陸燈はもちろん、秋司たちが勧誘しようとしていることくらいは「飽きが来ている話題」と言ったよりも前から気付いていた。


「そうだな。やっぱり聴かせずして誘うのは失礼か」
 

秋司は自嘲気味に話して、自分の上着のポケットから掌に十分収まるコンパクトなウォークマンを取り出した。はなから聴かせるつもりで用意してきたのだろう。
 
パソコンから曲を取り込むという、今流行の代物だ。


「そこの6番目に入っている曲が、昔俺たちがやっていたバンドの曲だ。と言っても解散したのは数ヶ月前だけどな」
 

そう言って手渡されたウォークマンの電源を入れて、陸燈は6番目に表示された曲を聴いてみる事にした。
 
出だしのドラムは元気があって先をわくわくさせる感じだ。そこへ無理なく入り込んで来たのがベース。しっかりと曲を支え引っ張っていっている。歌も魅力に溢れた面白い声をしていた。

今まで参加したどのバンドよりも上を行っていることは十分に理解できた。

しかし――


(崩れてんな……)
 

陸燈の驚きも束の間、眉間に皺を寄せる。
 
ベースと一緒に入ってきたリードギターだろうか。最初は違和感無く聴けたのだが、曲のテンポが上がるにつれてバランスが崩れてきているように思う。それに引きずられるようにもう一方のギターもおかしな音を立て始めている。


(話にならないな)
 

陸燈の眉間の皺が一層濃くなる。
 
自分と同じギターでこんな演奏をされたら不快に思うことこの上ない。


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