SOUND・BOND
かろうじてベースが上手くまとめているため、素人の耳にはそう変化は感じられないかもしれないが、このベースが実力を発揮できずにいることは明白だった。
もっと上手いだろうにと陸燈は思う。
「このベースは?」
向かいにいる薫季に尋ねると、彼は人差し指を斜めに向けた。
「そ、俺だよ」
指された秋司が軽く手を上げた。
「じゃあドラムが光で、ボーカルがタキってところか」
「え……!」
なぜだか分からないが、思ったまでのことを口にした陸燈に視線が一様に集まった。フォークを2個目のケーキに刺したところの光が一番驚いて目をぱちぱちさせている。
「驚いたな…。タキはともかく、光がドラムだって当てはめるにはそれなりに時間がかかるぞ。俺とタキは実際目にしたから納得できたが、そうじゃなかったら思いもしないさ。それを陸燈はあっさりドラムだと言い当てた」
さすがだなと彼は言うが、感じたままを言っただけで、何も誇れることではないと思う。
半分ほどになったレモンスカッシュを口に含み、飲み込んでから吐く息に溜め息を重ねる。
「光は外見がそれだからピンとこないかもしれないけど、リーチ、長いよな?それに、この調子に乗った元気の良さはあんたしかいないと思っただけだ」
ドラムのことと、腕が長いことを言い当てられたのは嬉しかったようだが、調子に乗ったは余計だと光は軽く睨んできて剥れた。それでもケーキにフォークは刺さったままだ。