SOUND・BOND
「それで、どうだい?」
レモンティーを飲み干して薫季は視線を静かに向けてくる。
実力は分かったし、これ以上聴いても不快に落ち込む一方だと思い、陸燈はスイッチを切った。
今まで一人でやってきたものを、突然現れた人間に一緒にやらないかと言われても実感がわかない。ギターは生活のため、それに真空や何より自分自身のためにやってきたようなもので、人と馴れ合いながら演奏することはどうしても戸惑いを感じてしまう。
未知の部分が多すぎてなかなか首を縦には振れない。
彼らはプロを目指しているという。
スカウトされたことはあったが、全く考えていないと断り続けた世界だったために余計重く感じられるのだ。
それに、成功しなかったことを考えるとこの先生活が一変してしますかもしれない。今の環境を崩してしまいたくない思いが邪魔をする。
陸燈は残り僅かのレモンスカッシュに目を落としながら、考えに耽っていた。
「断る様子を見せないということは、少しは興味があるってことだよな?それとも本気だけど障害があってなかなか踏み出せない、とか?」
見透かすような秋司の物言いに陸燈は一瞬息をのんだ。
本気という言葉には少し引っかかりを覚えたが、事実、大体当たっているために言い返せない自分を情けなく思う。
下手なギターはともかく、これだけ上手いメンバーが誘ってきてくれているのだから嬉しくないと言えば嘘になるが、なかなか他人を信じきれない気持ちがどうしてもストッパーをかけてしまう。
「お兄ちゃん、やってみたら?」
「…真空?」