SOUND・BOND
いつの間にか、てんこ盛りだった甘ったるそうなパフェが空っぽになっていることに気付く。
それをたいらげた真空は、満足そうに口元を付属されていたペーパーで拭いてこちらを見上げてくる。
「お兄ちゃんのギターをもっとたくさんの人が聴いてくれるんだよ?真空、何でお兄ちゃんバンドに入らないのかなって不思議に思ってたの。だってこんなに素敵なのに、真空以外の人とはあんまり付き合おうとしないし、もっと日の光浴びたっていいと思うの。真空とお兄ちゃん本当の兄妹じゃないから、髪とか目の色だって違っても仕方ないよ。真空のために気を遣ってくれてたでしょ?でも、ちゃんと授業参観来てくれたじゃない。だから、今度はお兄ちゃんのために違う世界に飛び込んでみるべきだよ!」
疑いようのないほど真っ直ぐな眼差しに、陸燈は目を見開いたまま逸らせなくなった。
「大体、まだ若いんだからね!人生楽しまなきゃ損だよ。転んだってまた立てばいいじゃん」
なんと年寄り臭い台詞を吐く9歳だろうか。
陸燈は一瞬、かけていた肘がずり落ちそうになるが、正確に的を射ていて正直面食らった。
おそらくテレビか何かで聞いたことを真似ただけなのだろうが、少女は真剣そのものだった。だから余計におかしくなり、「あははは」と向こう側にいる秋司がついに笑い出した。
「いい!いいよ真空ちゃん!どんどん言ってやって!」
その向かいではケーキを2つともたいらげた光が、口に入れたミルクティーを噴出しそうになって慌てて飲み込んでいる。
薫季は薫季で、釣り上がり気味の目を細めて「くくく」と遠慮がちに笑っていた。
「ま、真空……」
少し綻びかけた口元を陸燈はゆっくり引き締める。