SOUND・BOND
真空が本当の兄妹ではないという発言にはまったく触れてこないところをみると、彼らはもう知っているのだろう。それを真空から聞いたのか、それとも……。
視線に気付いた秋司が顔を向けてくる。
「ああ、話の流れから察するに、君たちはお互いの外見にコンプレックスを抱いて悩んでいたんだな。義兄妹であることくらいは聞かなくても気付いてたぜ?実際そのことには触れなかったしな」
「なぜ?」
「ん?興味なかったから」
意を決して問うたことに、彼はあっさり、本当にまっさらな感情で答えてのけたのだ。心底驚いた顔を向けると彼は言った。
「俺たちが興味あったのは、陸燈の人柄とギターの腕だけさ。お前のギター聴くためにわざわざルソワールまで行ったんだぜ?」
的外れな「有り難く思え」に、どう反応していいのか分からなかった。誰も来てほしいなどと頼んじゃいないので、的外れもいいところだ。
それでも、本当に有り難く思わなければならないのはお互い様な気がした。そのお互いの中には自分の方が多く含まれていると感じている。まったくおかしな話で調子が狂う。
今までは外見ばかりに周囲の目が集中していて、決して内面を見ようとする者はいなかった。
自分が反発していたせいもあるかもしれないが、外見だけで判断されて内面までは気持ちが回らなかったのだ。
それがどんなに悔しかったか陸燈は改めて考える。しかしそれも今日までだ。彼らが自分の人柄に興味があると言ってくれているのなら、そのチャンスを信じて生かしてもいいんじゃないのか。これを逃したら真空のいう日の光を浴びる機会など巡ってこないかもしれない。
この先のことなんか誰にも分からない。どう進むのか決めることができるのは自分自身でも、運命を決めてしまうことは誰にも出来ないのだ。
彼らと出逢ったのが必然なら、これからの未来が運命。その、人の意志で変えることも予測することもできない力にどう向かうべきなのか、陸燈は考えることが無謀に思えて行動に移すしかないと思うことにした。