SOUND・BOND
「調子いいよな、まったく」
「え?なにか言ったか?」
「仕方ないなって言ったんだ」
呟いた言葉を言い換えて秋司に返す。その意味を知ってか知らずか、彼は口元を意味深に持ち上げた。
(こいつ……)
明らかに最初のぼやきも耳にしたとみえる。
彼は薫季の言うとおり、人の思考すら読みすくってしまう厄介な仲間になりそうだ。
陸燈は眉を顰めるも、口元は笑みを溢していた。
何気にアイコンタクトをとっていた形の陸燈と秋司は、他メンバーの視線がずっと注がれていたことにようやく気が付いた。
それを知っても秋司は動じず、残りのホットコーヒーを流し込みにかかった。
陸燈は一瞬怯むが、真空の笑顔を見て嘆息まじりに降参した。
薫季と光はどうやら言葉が欲しいようだった。
「分かった。あんたたちのバンドに入るよ。けど、条件がある」
陸燈は一呼吸置いて突きつけた。
「真空を悲しませることはやらない。ライブがどうのって話しよりも、必ず真空を優先するからな。どんなに練習時間が足りないって怒鳴ってきても俺は迷わず真空を選ぶ」
バンドと真空、どちらを取るかと言われたら、迷わず妹を取るに決まっている。そのことだけは譲れなかった。真空を守れるのは自分しかいないのだから。
大真面目に話したことなのだが、どこか彼らの様子がおかしい。下を向いてふるふる体が揺れている。
そして、最初に堪えきれなくなったのは光だった。