SOUND・BOND
目尻に涙を浮べ、思いっきり何かを堪(コラ)えている童顔が徐々に上げられこちらを見た。陸燈は嫌な予感を覚えて顔を引きつらせる。
そして目が合った瞬間に彼は爆発した。
「だ、だ、だ、ダメだ!あははははっ。いや、まじゴメン!笑える話じゃないんだけど、かっ、可愛すぎていけないや!」
彼に可愛いなどと言われたくはない。
「もうさ!真っ直ぐすぎなんだもん!最初は結構へそ曲がりできつい感じに見えたけど、シスコンもいいとこ!」
ひ、ひ、ひと笑いを引きつらせながら続ける光を、「年長者のくせに失礼だ」と、この時だけ年上扱いして睨(ニラ)んでやる。
「でも、いい奴じゃん♪」
いきなり笑いを止めて真っ直ぐこちらを見てくる光に、陸燈は何も言えずにただただ呆気に取られるばかりだ。さっきまでの怒りは何処へやら。完全に彼のペースに流されていると分かってはいても、なかなか抜け出せないのは何故なのだろう。
「シスコンはともかく、陸燈は心(しん)から優しい人間なんだ。――大丈夫、俺たちちゃんと分かってるから」
笑いを懸命に堪えていたはずの薫季も、いつの間にか平常心を取り戻してさっきと変わらない、落ち着いた微笑を浮べて寄こした。
「と、まあそういうことだから」
飲み終えたカップを受け皿に置いた秋司は「それじゃあ」と、どんどん先へ進めている。
強引とも言える変化にやはりなかなかついていけない陸燈は、ほんの僅(ワズ)か残っているレモンスカッシュを、何もかも全てを飲み込む勢いでグイッと飲み干した。