SOUND・BOND

ぽかんと口を開けたまま小さな背中を見届けてから、陸燈は我に返って考える。
 
自分も驚くほど簡単に打ち解けることのできたあの3人(半ば強引だったのだが)は、確実に大きな変化をもたらすのだろうと陸燈は深く思う。

彼らと出逢ったのも真空の存在があったからだ。今考えると本当に不思議な星回りだと感じる。他人を少しでも受け入れ、気持ちが変化したお陰でバンドに入る決心がついた。

そこには必ず真空の笑顔があり、言葉があった。
 
授業参観に出たことがきっかけで自分の中で何かが変わった。というより生まれたという方が近いかもしれない。
 
陸燈は何かを吐き出すかのように大きく息を吸い、吐き出した。


(そろそろ、自分の外見を俺自身が受け入れなきゃな……)
 

足元に置いたソフトケースから、アコースティックギターをおもむろに取り出すと、陸燈は軽く深呼吸して弦を爪弾(ツマビ)く。
 
いつもと変わらない音が自分を包み込んでくれる。
 
陸燈は自然と口元が緩み、不思議と指も軽やかに動いた。
 
全ての繋がりはこのギター。
 
閉ざされていた道を明るく照らし示してくれたのは、紛れも無く自分が奏でるギターの音だ。


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