SOUND・BOND

曲が終わり、狭い個室がようやく静かになると、薫季はおもむろに秋司へ目をやった。ずっと目を伏せていた彼だが、今はじっとこっちを見てなにやらフリーズしているように思う。


「AKI?お~い……?」


 瞬きしなくて目、乾かないか?と冗談半分で訊ねる。だが、今の秋司に何を言っても答えは返ってこない。

何をそんなに放心しているのかさっぱり分からなかった。そんなに自分の歌は下手糞だったのだろうかと、また不安になってくる。

結構良く歌えたと思っている自分は間違っているのかと、薫季は肩を落として俯いた。


「すごい……」

(?)
 

秋司の第一声に薫季は弾かれたように顔を上げた。


「え?」


何が凄いんだ?と親友の次の言葉を待った。


「だから、お前の声!」


いきなり秋司は体ごと迫ってきて、薫季が持っているマイクを薫季の手ごと握って目の前に持ち上げた。

いきなり近づいてきてこの行動には驚いたが、もっと胸を打ったのはこの後――


「タキ!お前歌え!」

「はい?」


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