SOUND・BOND
それは今の歌が良かったということか?自信をもったことは間違っていなかったということなのか?そうでなければ歌えなんて強く言ってはこないはず。
「想像以上に凄いぜ、タキ!なんで今まで隠してたんだよ!」
「べ、別に隠してたわけじゃないって……。ただ歌う気も機会も無かっただけで……」
「じゃあ、歌う機会があれば歌うんだな?」
歌う気の方は問題にしないのか?と、薫季が思うより早く、彼ははっきりと言ってくれる。
「ステージさえあればお前は歌える!こんなところよりもっと気持ちよくな」
彼は薫季の歌いたいという気持ちをしっかり掴んでいた。
まったく秋司には敵わないと、この時本気で思った。
そして2人でバンドを抜けて暫くの間、何処のバンドにも入らず個々で練習に励んだ。
薫季はまず、いろんな歌に触れて自分の声に一番合った歌い方を探し求めた。
適当に歌いまくるのでは上達しない。録音した自分の声をじっくり聴いて毎日最低2時間以上は練習に当てた。
秋司も同じだ。曲のレベルを上げていき、2年経った高校3年には高度な曲も総嘗(ソウナ)めの域に達するところまできた。
そして高校の卒業祝いと、自活しながら本格的にプロのミュージシャンを目指して活動を始動する景気づけに、薫季と秋司は東京へライブを見に行った。
そのついでに何件かのライブハウスを訪れ、いろんなバンド演奏を聴いて回った。