SOUND・BOND
東京滞在最終の夜。
最後だから少し遠くまで足を延ばした。
そして見つけたルソワールというライブハウスは、今まで回ってきたどのバンドハウスよりも熱気が篭っていて立ち見客も多く、まだかまだかと落ち着きの無い空気がびんびんと伝わってきた。
これは聴いて帰るしかないなと、興奮して止まない客たちの後ろでそのバンドが出て来るのを待った。
そして、今までとは違う客の盛り上がりに、2人はステージを注目する。
演奏が始まってから騒がれているのはボーカルとギター。確かに上手いことは上手いが、ルックスに注目が集まっているように思う。
そんな中、薫季と秋司は全く違うところに目をつけていた。
「かなり小柄だな。高校生……中学生か?」
「さあ……。でも実力はこの中で一番だろうな」
後ろでドラムを叩く、見た目では中高生くらいに思うが、少年は座っているから正確には分からない。肩幅が狭く、やたらとドラムセットが大きく思える。
しかし、スティック捌(サバ)きが半端ではない。小柄な体格から繰り出される鋭い腕の動きによって迫力のある音が生まれているのに圧倒された。
だが、タッパのことなど微塵(ミジン)も感じさせないこのプレイに、一体ここにいる者の中で何人が胸打たれたのだろう。
ギャラリーの様子を見る限り、きっと殆どがあのボーカルとギターに目が行っていて数えるほどもいないだろうと思う。
注目は曲後半になってもその2人だけだった。秋司の言うとおり実力はドラムの彼が一番勝っているというのに……。
「悔しいな……。あんなに上手いのに人気があるのは他のメンバーだけなんてさ」