SOUND・BOND

ライブハウスにはもう客はいなかっただろうと思い、入り口を背にして立っていたところへ、後ろから声をかけられるという不意を衝かれたものだからかなり驚いた。

ばっと振り向くと10センチ以上下に相手の顔があり、それがずっと待ち続けていた人物だったため更に驚き一瞬息が詰まった。


「何をそんなにビックリしてんの……?確か、一番後ろで見てくれてたよな!ありがとな~。どうだった?楽しんでくれたか?」

「って……何で表から?」


相手の質問より先に、この不思議な状況を何とかしたかった。


「ああ!今一人で叩いてたからさ」


その言葉には直ぐに納得がいった。あのライブでは満足しないであろうことは、見ていたこっちにも十分伝わってきていたからだ。最後にもう一度思いっきりドラムを叩きたくなるのも当然だ。


「で!どうだった?」


こうして立った状態でまじかで見ると、小柄だと言うことを改めて実感させられる。

やはり中学生くらいだろうか。自由に外へはねた短い髪と、目は動物に例えるなら、慣れた人間には可愛く、そして初対面の者には警戒心丸出しの鋭い目をする猫に近い。そんな外見が一層学生であると思わされる。

会うのは初めてだが、演奏を聴いていたことで今は好奇心一杯の可愛い方の猫目だ。


「ああ、凄かったぜ、お前のドラム!そんなちっさい体の何処にあんなパワーがあんのかってくらい圧倒されたぜ!」


 驚きが解けたらしい秋司は少し興奮ぎみに話す。


「あはは!それ良く言われるんだ~。でも僕腕が長いからな!ちょろいもんだって!」

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