SOUND・BOND
見た目どおり感じのいい奴でホッとする。
他のメンバーが外見で目立っていたから気付かなかったが、彼もこうして見るとなかなか可愛らしい容姿をしているじゃないか。と、男の薫季がそう思うくらいなのだからそれなりにファンがいてもおかしくはない。
それでも騒がれないのはやはり小柄で一番バックにいるせいなのか……?もし、捻くれた性格で内面的に問題があってファンがいないということであれば、誘わずに帰っているところだ。
「リーチがあってもあれだけの動きはそうそう出来るもんじゃない。まだ学生なのにスゲぇな!」
浮き足立っている秋司はもう誰にも止められない。
「それでさ!高校まで卒業したら俺たちとバンドやらないか?お前をメンバーに誘いたくてここで待ってたんだ!」
これは意地でも引っ張り込む気だ。この強引さで薫季も色々なライブへ連れ回された記憶がある。
「AKI、少し落ち着けよ。彼には今のバンドがあるだろ?それに、何年も先のことを今決めさせるのは無理があるって」
確かに仲間にしたら最高なバンドになるだろう。初めは薫季も仲間に加えようと意気込んではいたが、冷静に考えれば今はまだ無理だと分かる。
「まあ、そうだよな……。それに俺たちはここの人間じゃないからな。こいつを俺達の地元に連れて行くわけにもいかないか……」
秋司はがっくりと肩を落とした。熱が雨に濡れて一気に冷めていくようだ。
「あんたら……さっきから何言ってんの?」
暫(シバラ)く黙ってこっちの様子を窺っていた少年が唐突に訊いて来た。今までの話、それほど理解に苦しむ内容だったろうか……?