SOUND・BOND
突然大きな声を出すから驚いて、しっかり聞き取ることができなかった。

光はスティックを取り落とす。いくら大きな声でもそこまで驚きはしないだろう。彼の場合はしっかり聞き取った上でそれに驚き、落としたのだ。


「だから!また3人でやっていこうって言ってんの!」


秋司は迷うことなくそんな結論を出したのだ。このままSTORMにいても先が見えている。だったら、2年前に3人で活動していたようにまた動き出せばいい。


「ははは!こりゃいいぜぇ!お前らだけでやってく?そんなこと出来っこねえだろ。お前らを拾ってやったのは俺なんだぜ?上手くいくわけねぇだろ」


卓真は豪快に笑い出す。それに便乗するのは翔くらいだ。


「そんな簡単じゃねえぞ?どうせ泣いて戻ってくんのが落ちだぜ」


その言葉を秋司もあざ笑うかのように返す。


「それはどうかな。実力は今では俺たちの方が上だ。あんたたちはステージでボーカルのタキよりも喋り捲ってたから目立っていたように見えたが、プレイもルックスも俺たちが勝ってる。泣き寝入りすんのはそちらサンだぜ?」

「AKI!言い過ぎだろ!」

「言い過ぎなもんか!俺たちは裏切られた上に虚仮にされたんだ。黙っていられるわけないだろっ」


かなり頭に来てしまっているらしい。これほど怒りをあらわに見せる秋司にはお目にかかったことが無い。伏せ目がちの目が冷たさを帯びている。

落ち着かせようと言い合いに口を挟んだが、今は秋司の威圧感に言葉が詰まって上手く声が出てこない。

そんな時、取り落として床に転がるスティックを拾う光の姿が、目の端に映った。

彼はそれを手にして上半身を起こしながら、


「僕もAKIに賛成」


と、落ち着きはらった態度で言った。いつもはきはきしている彼でさえ今では目を伏せて冷たく、こもった声で言う。


「楽しくないバンドなんて、やっていたって意味が無い。このままSTORMで続けていたって、いつか必ず壊れるよ」


いつもと違って大人びた表情。これもまた本当の彼なのだろう。

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