SOUND・BOND
「おい!何処行くんだよ」
彼の後を翔が追いかける。どちらもこっちを振り向かない。
「はは!勝手にしろっ」
卓真は最後まで笑い飛ばしてここから姿を消した。
背を向けていて表情までは確認できなかったが、彼が最後に吐いた言葉を、薫季には嫌な感じに聞こえなかった。頑張れ、とまではいかないにしろ、それに近いものを感じていた。
卓真がもし本当にバンドを遊びだと思っていたのなら、その玩具のひとつである薫季たち仲間を置いて自ら身を引くことはしないだろう。
彼には彼なりの償い方でケリをつけた。それはきっと無意識のうちだったのかもしれないが、根っからの悪い奴と決め付けるようなことは絶対にしたくない。それは秋司と光も感じていることだろう。
それに彼にはまだずっと苦労を共にしてきた翔がついている。きっと大丈夫なはずだ。
深く考えるのはよそうと、薫季は目を一瞬伏せた。