SOUND・BOND
一般的な黒い瞳に黒い髪は腰の辺りまで真っ直ぐ伸びている。顔立ちも小顔ではあるが陸燈のように切れ長の目ではなくクリッとした大きな瞳が印象的だ。
誰もが可愛らしいと思うだろう少女を、こんな外で待たせていると思うと心配で堪(タマ)らないと思うのが普通。
だが、陸燈にとってはどことなく苦さを感じてしまう。それはこの子が自分の妹であって、そうでないから――。
だからやめるように言い聞かせているのだが、思うように伝わっていないのか彼女は必ずここに立っている。
陸燈は少々困った表情を浮べながらも少女の待つフロアーの入口まで行くと、視線よりもずっと下にある頭に優しく左手を置く。
利き手側はヘルメットと肩にはソフトケースが掛かり塞がれているため仕方ない。
「真空。もう寒いから、これからはちゃんと中で待ってろよ?」
「大丈夫だよぉ。結構いっぱい着てるから!」
被ってはいないがフード付きの木綿製で厚手の赤いシャツに、その肩に掛かるのは淡い藍色のカーディガン。下はジーンズとスニーカー。外から分かるのはここまでだが、中にも何枚か着込んでいるのがトレーナーの膨らみで窺えた。確かにこの時季の夜にはそれなりに温かい格好だろう。
しかし、こっちを見上げている小さな顔は少し白く冷たい色をしていた。
「ほら。顔がこんなに冷え切ってるじゃないか」
頭から頬にずらした手には言うほど冷たさは感じなかったが、今後外で待たないようにとあえてそう言う。
「冷たくなんかないよぉ、嘘つきぃ」
真空は弾かれたように自分の頬を両手で押さえて、温かみを確認するとその頬を軽く膨らませて言った。