SOUND・BOND
真空の顔の白さは生まれつきで、病気なんかで青白くなった顔など死人ではないかと思うほどだ。
もちろんそんなことは口に出して言ったことはないが、彼女が聞いたらきっと今のように頬を膨らませて怒ることだろう。
しかし、普段の真空はほんのりピンク色に染まった頬が可愛らしく、目に入れても痛くないという言葉の意味が良く分かる。それは自分の子どもや孫に言うものなのかもしれないが、陸燈にとってもこれは同じに思えた。
今、そのピンクが浮かんでいないのはここが外でやはり秋の風に触れていたからだ。
「とにかく、これからは大人しく部屋で留守番してるんだ」
と、陸燈は言い聞かせながら、厚いガラスの扉を開き自らの体で閉まらないようにそれを支えながら、妹の背を押して中へ入る。
マンションの3階でエレバーターは止まった。この階の奥から2つ目の扉のすぐ横に、甲斐澤陸燈と真空と書かれたプレートが貼り付けられている。
この高級なマンションの個室に、たった2人だけの名前が――。
扉はカードキータイプで、カードを差込み下へスライドさせるとピッと音を立てて解除される。
入ってすぐのシューズボックスの上に陸燈はヘルメットと愛車の鍵を置き、暗く閉ざされた我が家に明かりを点した。
室内は個室が2部屋にあとはリビングとキッチン。浴室にトイレは上がってすぐのところにある。
個室は、奥が真空でその手前は陸燈が使っている。
靴を脱ぐなり真空は一目散に自分の部屋へとんで行き、ソファへ腰を下ろした陸燈の元へ再びパタパタと足音を立てながら舞い戻ってきた。