SOUND・BOND
陸燈は自分にしがみ付く妹の黒髪をまたそっと撫でてやる。
周りから兄妹だと認識されないのは仕方がないことだと諦めていた。実際この似ても似付かない外見は同じ血が入っていないことを物語っていたからだ。
陸燈の母親は幼い頃に事故に遭い病院のベッドの上で息を引き取った。
当時の状況をはっきり覚えてはいないが、小さな胸に大きな衝撃がきて、一生目覚めることがないと理解していたか分からないまま母親にしがみ付いて泣きじゃくっていたことだけは覚えている。
それから数年経ち、中学生になったころだ。父親が新しい母親になるんだぞと言って連れて来た女(ひと)の腕に抱かれていたのが真空だった。
少女は気持ちよさそうに寝息を立てて眠っていた。白い肌は当時も今も変わらない。
今撫でている髪は、当時は肩の辺りで綺麗に揃えられ、まるで日本人形のようだった。
今もそうだが、あの時より少し華やかさが瞳にのぞき、それとは少し違ってきているように思う。
「それで、そっちの紙は?」
陸燈は床に落ちている紙を目で指す。
さっきまで真空の手に握られていたのだが、彼女が跳びついた拍子に落としたのを横目で見ていた。
「あ!これはねぇ――ジャン!」
陸燈から離れ、慌てて拾い上げた真空は妙な掛け声に乗せて二つ折りにされた紙を開いて見せた。
それは『授業参観日程表』と見出しを飾っている。
これに来て欲しいと、言わずとも真空の瞳が容赦無く訴えかけているのが伝わって来た。
しかし陸燈は顔を曇らせる。
こればっかりは期待に応えることが出来ない。