SOUND・BOND

いつの間にか逸らしていた視線を弾かれたように妹に戻すと、幼くも品のある眉が顰められていた。


「真空、お父さんもお母さんもいなくたって平気だよ?お友達に何言われたって気にしないもん。陸燈お兄ちゃんと血が繋がっていなくたって悲しくない!」

「真空……」

「お兄ちゃんのこと悪く言うお友達なんていらないよ!真空……真空はカッコ良くて優しいお兄ちゃんが大好きだもん!」


言いながらポロポロと大粒の涙が、今は歪められた大きな瞳から零れ落ちてきた。それは陸燈のズボンにシミを確実につくっていく。

今まで来て欲しいと言ってくることはあっても、こんなに大泣きするほど懇願することはなかった。

陸燈は少し焦りながらも驚いた表情を隠し切れずに、泣きじゃくる自分の妹をまじまじと見つめた。

今の両親は2人っきりで暮らしたいからという勝手でふざけた理由で、3年前にここへ陸燈と真空を追いやり何処かへ姿を眩ませた。

暫くは前いた家に電話をかければそこにいることを確認出来たが、数ヶ月してぱったり音信不通になった。

陸燈はもちろん帰ってみたのだが、そこに人が住んでいる様子は感じられなかった。その時にようやく捨てられたのだと実感した。

まだ小学校に入ったばかりの真空はショックも大きく、今のように夜な夜な泣き続けた。

昼間は学校があって少しは気も紛れていたようで泣きはしなかったようだが、ここに帰って来ると両親がいないことを思い出させ涙を沢山流していた。

両親が消えても学校に通っていられたのは、養育費と生活費だけは振り込まれてきているからだ。あの親たちにも少しは責任を感じる心があるのだと思うと、憎らしく思っていても全てを怨むことは出来なかった。

しかしそれは真空のために我慢するしかないという現実からのものだ。

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