SOUND・BOND
可愛ければ何しても許されると思っているのなら、教育し直さねばならないなと、陸燈はまた苦笑すると、
「なに笑ってるのぉ?真空、はめてなんかないよ!」
と、真空の大きな瞳が細められた。
剥(ムク)れる妹をまた優しく撫でてやる。
「ああ。一緒に給食とスポーツ大会に参加して欲しいんだろ?」
膨らんだ頬はしゅっと元に戻り、今度は赤く染まった。
ころころ変わる表情にまた可笑しくなる。
密かに願っていたことを正確に当てられて恥ずかしく思ったのだろうか。真空はぷいと顔を前へ戻し、俯いて何かを言っているようだったがほとんど口ごもっていて聞こえない。
きっと言い当てられたことを、何故気付かれたのかとぐるぐる考えているのだろう。陸燈はそう思って真空の横顔を薄っすら笑みを浮かべながら見守った。
「それだけじゃないもん……」
「ん?」
小さくともいきなりはっきり聞こえた言葉が気になって先を待った。
「自慢したいんだもん」
「自慢?何をだ?」
そうストレートに聞くと、少女は振り向き大きな黒い瞳で真剣に陸燈の顔を見つめた。
「え……」
まさかとは思うがこれが違っているとも思い難い。出来れば違っていてくれと願うが、陸燈には思い当たることがあった。
今日ゲストライブをしたバンドの連中が言っていたこの外見を示す存在感というもの。
それが頭を過ぎり、ここでもか……とついつい溜め息が漏れてしまうのをどうか許してほしかった。