SOUND・BOND


「俺、髪はただ染めただけだし瞳はカラコン入れただけだから、って言っとけば目立った特徴も無い普通の人間だぞ?存在感があるだとか自慢したいなんて思われるようなとこひとつも無いんだけど?」


呆れながらも説明すると、真空は首が捥(モ)げるのではないかというくらいブンブン横に振って見せた。


「陸燈お兄ちゃんはカッコイイよ!髪の毛だって目だって綺麗だもん。背だって高いしギターもお料理だって上手だもん!それから、頭だっていいし優しいし……それから、それから……」

「わ、分かったからもう何も言うな!」


子どもは何でも思ったことを口にするというから恐ろしい。実際陸燈自身そこまで完璧な人間だとは思っちゃいない。

それでもこの真剣に発言している真空がお世辞を言うとも思えないから、今言ったことは彼女の中ではっきり感じていることなのだろう。

こんな風に見られていると思うと自分自身に鳥肌が立った。

横目で真空を盗み見ると、まだかなり意識して顔を覗きこんできていることが窺(ウカガ)えた。

仕方がないから、ギターの腕の良さと身長と頭脳は認めてやる。

それ以外で優しいというのは妹である真空限定だということを条件ならばそれも良しだ。などと冗談混じりに思う。

だからといってシスコンというわけではない。小5の時に捨てられたトラウマで、ただただ妹以外の他人を受け入れられない感情があるだけだ。

もちろん幼い頃から揶揄され続けた外見にも問題はあった。

などと漠然ながらも考えていたら、ふと真空の頭が陸燈の太股に降りてきた。


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