SOUND・BOND
「どうした?」
と訊いてから答えを聞く前に少女の虚ろな目を見て理解した。
「眠いか?」
返事はこくりと頷いて返された。
気が付けば、もう日にちは替っていた。
小学4年生には起きているのは少しきつい時間だろう。
「ほら、自分の部屋行って寝ろ。そしたら明日ライブに連れてってやるから」
「ライブ……?」
必ず反応することを見越して陸燈は話した。
「ああ、いつもの公園通りでな。明日は何曜日だ?」
正確にはもう今日だが、眠っていない子どもにとっては朝起きた時がその明日なのだ。
「えっと……あ!」
閉じかけていた瞼が再び持ち上がった。
「土曜日だぁ!」
「正解。もしここで寝たらおいてくからな」
この一言が決め手となって真空を動かした。ぴょこんと膝から頭を起こし、おやすみなさいと言いながら奥にある自分の部屋に真っ直ぐ入って行った。
暫くしてその部屋から物音が聞こえなくなる。どうやら夢の中に入ったのだろうと確信して陸燈は息を吐いた。
なぜ土曜日なのか――
それは真空の休みに合わせて決めたことだった。
陸燈は昔からギターが好きで幼いころは毎日飽きもせずギターをいじっていた。
真空が家に来た時も、義理の妹のことなど興味も持たずにギターに没頭していた。
妹のいる部屋で弾くこと数日。ある変化に陸燈はようやく気付いた。
真空は興味津々といった様子で、食い入るように陸燈の弾くギターを見つめていたのだ。