SOUND・BOND
明日弾くのは5曲。全て陸燈が生み出した曲で、それなりに評判はいい方だ。CDは出さないのかと尋ねられるほどに完成しつつある。――だからなのかもしれない。自分の生き方に恥らい無く自身を持てるのは――
それでも完成にたどり着いた曲はまだひとつもない。必ず最後には何かが足りないと、仕上げる直前に思うのだ。
真空には毎回のことのように、最高だ、完璧だと褒め称えてくれるのだが、正直言ってそれを素直に頷いたことは一度もなかった。
曲の音程やアレンジがいけないのか。それとも歌が曲と合っていないのか。原因はまったくわからないが、力が及んでいないことは確かだ。それを自分以外の他人に言っても、そんなことはない、充分じゃないかという持ち上げるような答えしか返ってこないのは目に見えている。
これは自分で見つけ出すしか方法がないことに陸燈は気付いていた。
真空を守っていくには早く完璧なものを仕上げなければならないと――
陸燈はベッドに腰を掛けると、組んだ足の上にギターを構えた。
そして、集中して練習に没頭するも、心の奥の方ではもやもやした何かと戦っていた。
その音が止んだのは丁度5曲目が終わってからだった。