SOUND・BOND
ステージ2
2-Ⅰ
「3年ぶりの東京かぁ」
「あれ?光はあれ以来帰ってないのか?」
「いんや?一回帰ったけど、次の日には戻ったから実感無いだけ」
函館から飛行機に乗り込み、空を飛ぶこと1時間20分。空の旅を満喫する暇も無く羽田空港に着陸した。
ロビーから外に出ると、口を開けて客を待ち構えているタクシーが数台停車している。その後ろには全く同じ姿のタクシーが何台も連なって自分の順番を待っていた。
客を乗せて走り去ると、次のタクシーが同じ場所に停まってドアを開ける。仕事を終えて戻ってきたタクシーがまた後に続くから、それは途切れることがなく永遠に続くかのようだ。
だから慌てて乗る必要はなかった。だからといって目の前のタクシーを焦らしているわけではない。
桐坂薫季は荷物をじかに地べたへ置き、久々に降り立った東京を懐かしがる仲間の真爪光を振り向く。
「その一回って、俺達のためか?」
「いや、まあ、それもあるけど親にもたまには帰って来いって言われてたからね。それも兼ねて2年半ぶりに帰ったんだ」
「そっか」