SOUND・BOND
「それにしても遅いよな、AKI」
扉を挟んで向こうに広がるロビーを窺う光。
続いて薫季もそっちに顔を向けた。
「確かに。ケータイなら俺の貸したのに……」
飛行機から出ると、ケータイのバッテリーが切れたことに気付いた秋司は、公衆行ってくると言い出した。電話なら貸すと言ったのだが、どうやら長電話になるらしく、秋司は受け取らずに公衆電話に向かった。
あれから30分は経っている。
光はとんとんと靴を地べたに打ち付けながら、まだかまだかと彼の姿を探している様子。
イライラする気持ちは良く分かる。久々の飛行機で疲れているところに、追い討ちをかけるかのように30分も待たされていてはイライラも募るばかりだ。
「光。もう少し落ち着けよ」
「あ!」
光の態度に苦笑を漏らすと、いきなり彼は中に向かって声を上げた。
「や~っと戻ってきた!」
薫季も反射的に秋司の姿を探す。
背中に背負っているベースの入ったソフトケースが頭から少し突き出ている。間違いない、秋司だ。
濃いグレーで膝丈までの薄手のコートを羽織っていたが、ロビーから出るとそれを脱ぎだした。
「やっぱ、こっちはまだ暑いな」
目にかかる髪をベースを掛けている肩の方の手で払いながら、一方にある手荷物を彼も地べたに置いた。
「遅いじゃんか~。そんなに何処に掛けてたんだよぉ?」
剥れる光に秋司は手を顔の前で振って否定した。
「そんな30分も長電話してないって。ちょっとそこで気になる情報を聞いたからさ」
彼は自分の後ろにあるロビーへ親指を向けた。
「情報?」
遅くなったのは電話をしていたからというよりも、その情報に聞き入っていたからだと言われれば気にならないはずがない。
薫季は取り敢えず先を促す。