SOUND・BOND
光の実家は彼が言っていたとおり、なかなかりっぱな一軒家だった。
2階に個室が4部屋あり、そのうち丁度2部屋使っていないからということで、そこを使わせてもらうことになっていた。
薫季と秋司が居候することが決まってから、この部屋を掃除したのだろう。使われていなかったのに今ではしっかりベッドにシーツが敷かれている。カーテンにも日焼けがなく、わざわざ取り換えたのだろうと思う。
「ほんとに使っていいのか?」
改めて恐縮すると、
「いいっていいって!うち兄弟多いからベッドもあるしそれなりに不自由しないと思うよ?」
「兄弟って……?」
ここに来るまでに彼の両親には挨拶を交わしたが、他に家族は見当たらなかったはずだ。
「兄ちゃんたちはもう出てったよ。僕が末っ子だから」
(ああ、なるほど)
末っ子という部分には納得がいった。
「何頷いてんの……」
思わず首が動いてしまっていたらしい。光に軽く睨まれる。
「悪いなぁ光。居候させてもらって」
タイミングよく隣の部屋から秋司が顔を出した。そっちに光の気がそれる。
「自分の家だと思って寛(クツロ)いでよ。遠慮はなしな!」
言いながら指を立てて前後に動かす仕草は何とも彼にはまっている。
「サンキュ!それでも部屋が見つかったら直ぐ移るから」
光と3年もバンドを組んでいるせいか、初対面なら確実に萌える彼のちょっとした可愛い仕草など、秋司は最早見慣れてしまっていて素通りだ。
それは薫季にも言えること。
「そうだな、ずっとってわけにはいかない。メンバー探ししながらアパートも探さなきゃだな」
それからもうひとつ、バイト探しもしなくてはならないことに不安を覚える。
一体どれから手をつけるべきなのか……。
「まっ、まずは今夜のギタリスト見学からだ!」
秋司らしい決断だ。