SOUND・BOND
嘆息する薫季の横では、廊下と階段とを隔てる手すりに身を預けるように腕をかけた秋司が、くすくすと笑いを堪え切れずにいた。
「まったく、光は面白いよなぁ」
期待を裏切らないとでも言いたげな彼の横顔は、どこか違う意味が含まれているようにも感じられる。
前髪の間から覗く目がやけに異様な光りをはなっているような。もちろん本当に光っているわけではなく、そんな雰囲気があるというだけだが……。
(不気味な目だ……)
不思議に思う薫季の考えはあながち間違ってはいなかった。
なぜなら――
「可愛いよな」
今度はニコニコと陽気な笑顔でそう秋司は言ったのだ。
自分の耳がおかしかったのだろうかと、薫季は思わず人差し指を耳に突っ込む。
彼は靴を履く光の後姿を見下ろしながら、またしても、
「可愛い可愛い、ほんとに」
と、彼は笑顔を浮べたまま疑いようのない追い討ちをかけた。
もちろん光が可愛いのは薫季にも良く分かっていた。誰もが思うことなのだからそれは事実だが、口に出して言う野郎がいようとは思わなかったのだ。
しかも普段は落ち着きはらっている秋司がこんな軽やかな笑みまで浮かべて。
そのことの方が薫季には衝撃だった。
「AKI?大丈夫か……?」
と、遠巻きにしたい以前に心配したくなってくるのは薫季だけではあるまい。
そして異様な彼の視線は薫季に向けられた。