SOUND・BOND
手すりに身を預けたままの姿勢で、顔だけが不敵な笑みに変わる。
「なんだ。タキは違うのか?」
これは。明らかにからかっている目だ。
「はいはい。馬鹿を言うのもそのくらいにしとけよ」
その手には乗るまいとしれっとかわしてやる。
「本気なんだけどな」
(まだ言うか!)
心の中で突っ込んでおいて口には出さない。根はクールな彼だからこそ、口に出して言ったからといって調子に乗ってくることはないだろうが、別に彼は返事が欲しくて言ったわけではないと分かっていたからあえて心だけにとどめた。
「さてと。俺たちもそろそろ出ますか」
完全にいつもの秋司に戻っている。
小学生の頃から一緒につるんでいる彼のことは、未だに分からないことだらけだ。決して掴めないのではないが、どこかまだ外れた部分が隠れているといった感じに思う。
まあそれが秋司の人を引きつける不思議な魅力なのかもしれないと、薫季は彼に頷いて返事をしながら少し笑ってしまった。