SOUND・BOND

右肩にはエレキギターの入ったソフトケースを掛けている。

今日は、真空と向かい合って話したあの夜から、4回目の土曜日の夜を迎えていた。

土曜日にハウスでのライブはしないと決めていたのだが、今度助っ人に入る予定だったバンドにどうしても今夜入って欲しいと懇願され、今回だけ仕方なく受けた。

それに今日は特別な日。

だからずっとライブハウスへ行きたがっていた真空を連れて行ってやることに決めた。


「ん、どうした……?」


気付くと、真空の視線が上に向けられていたが、その目は陸燈の視線と合わないところに向いていた。

一体何をそんなに注目しているのかと最初は不思議に思ったが、意識している場所が丁度耳の辺りだったため直ぐにピンと来た。


「これ、ありがとな」


少し顔を横に向けて、視線が注がれている方の耳を、もっと見えるようにと真空に向けてやる。

今日、真空の小学校から帰って来ると、「お祝いに」と言って小さな手から渡された物が、今両耳に着いている、深く蒼い水滴形のピアス。

陸燈がそれを受け取ると、彼女はそわそわしながらはにかんだような笑みを浮かべた。その時のとても可愛らしい笑顔をふと思い出す。

それから彼女は言ったのだ。


「これに弱い心を閉じ込めちゃうの。そうすればもう泣かないですむでしょ?」


と……。


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