SOUND・BOND
2-Ⅳ
陸燈は軽く舌打ちする。
さっきまで真空と会話していた態度ではない。
ライブに出るようになってから、陸燈という名前に周囲が敏感に反応することが多くなってきたのだ。
だから、こんなところで名前を出さないで欲しかった。
幸い、聞いた人間はいないようだが。
声を掛けてきた男は、陸燈の冷たい視線に臆することなく続ける。
「さっきの子、誰だ?妹、ってことはないよな。まさか子どもか?」
この歳で子持ち?
実際18の陸燈に10歳の子どもがいるとどうして思えようか。
呆れて彼から目を逸らす寸前、ふと陸燈の頭を過ぎるものがあった。直ぐに視線を戻す。
(この男……)
何処かで見たと思ったら、前に参加したバンドのメンバーだ。
そのことをちゃんと覚えていた自分に、陸燈は軽く感動して皮肉めいた笑みを浮かべる。
「お前には関係ないだろ」
冷たくあしらいながらも笑みを溢したのは、陸燈の中で決定したことがあったからだった。
(二度とあんたんとこのバンドには手を貸さない)
ということが。