SOUND・BOND
お馴染みのバンド紹介がスピーカーから流れる。
それに耳を傾けながらギターの弦を軽く弾いていると、紹介の最後に陸燈と名前が挙がった。
いつもならこれで終わりのはずだ。
しかし、今回はまだ続きがあった。
『みなさ~ん!ここは撮影会場ではありませ~ん。演奏中は写メも禁止ですよ~!』
一体今何が聞こえてきたのだろう。
撮影?写メ?まさかな、と自分の耳を疑った。
いくらなんでも自分なんかを撮ろうと思ってはいないだろうと、陸燈は思いたかった。
直後、このアナウンスに対して客のブーイングがここまで聞こえてきたことに、自分の耳の疑いは晴れていくが、結果、嫌な予感が的中したことになり、
〝ビーン〟
思わず、手元が狂い弾いていた音を外してしまった。
その上ここの連中まで浮かれ出す。
「おお、さっすが陸燈だな」
「これでレコード会社から令名されてお呼びがかかる♪」
「間違いないな!」
ひとりがパチパチパチと何かを拝むように拍子を取る。3人の熱望する様子に陸燈は呆気にとられるしかなかった。
(ま、マジか……)