SOUND・BOND
真空はだんだん周りを見る余裕が生まれてくると、さっきよりも人が増えてきていることに気付いた。
あんなに空いていたステージの前が、今ではほとんど人で塞がれている。
(早く立たなくっちゃ)
周りに迷惑を掛けてしまう――と足に力を加えた途端(トタン)に激痛が走った。
「痛っ!」
なんだろう?転んだ時に足を捻ったのかもしれない。
肘とお尻の痺れは消えたけれど、今度は右足が……。
泣きそうになるが、鼻をすすって何とかこらえ、ステージに手を掛けて体を支える。
初めは引きずる感じだったが、だんだん痛みはひけてきて普通に立つくらいは出来そうだった。
「あら?どうしたの?」
真空の異変に気付いた様子のミチは、さっきまでとは違った調子の声音で訊いて来た。
この、人を見下したような喋り方。
明らかに足の痛みに気付いている。分かっていてわざとからかうように知らない振りをしているのだ。