SOUND・BOND
一箇所でパシャッ!という音がすると、連動するかのように我も我もと撮影会がスタートした。
あっという間にほとんどの客が、携帯またはカメラを陸燈にピントを合わせるかたちになった。
このなんとも狙われているような嫌な、というより怖い雰囲気にも関わらず、陸燈本人は全く気にかけていない。寧ろ気にする暇がないほどに違うところへ意識を向けていた。
さっと視線をステージの直ぐ手前にやると、可愛い妹の姿をさがしていた。
客が増えたことで前のスペースにもほとんど隙がない。
本当にここにいるのだろうか。確かに別れたとき妹が前の方へ行ったのを見届けた。
しかし今見えるのは成人前後かそれ以上の大人だけ。
いない……?
あの小さな体は一体どこに――
こっちの方が明るすぎて客席の人間の顔がはっきり定まらず、不安は募るばかり。
(真空……)
心配する陸燈の気持ちをよそに、後方でドラムスティックの打ち合う音が調子よく弾んで鳴る。
それは演奏開始の掛け声代わり。
カ、カ、カカカッ。
この会場の何処かで見ていることは間違いないだろう。
そう切に思いながらギターへ指をからませ、ピックを構え――
歓声とカメラのシャッター音を無理やり押し返す感じで演奏はスタートした。