SOUND・BOND
2-Ⅴ
「このバンドは駄目だな」
「確かに、音がバラバラだ。ギターはそれなりに響いてると思うけど、ベースが着いていけてないしドラムも滑ってばかりだ」
「タキも結構分かるようになってきたな」
「そりゃ、毎日プロ並みの誰かさんと一緒に居て?スパルタ教育受けてますから?」
「そいつは非常に恵まれてるな」
彼のことだ〝俺のお陰だ、感謝したまえ〟と本音も混ざっているのだろう、はははと笑う秋司に薫季は苦笑顔を浮べる。
歌を始めて3年。メリハリの付け方や出しにくい音域もまだまだ克服しなければならないところも多い。だからやっと3年というべきなのだろう。それでも上達してきていることは薫季自身素直に頷ける。
それはやはりこのべーシストのお陰なのだろう。
「なんだ?」
彼は薫季のまじまじ見る視線に気付き、眉根(マユネ)を顰(ヒソ)める。
「俺の顔に見とれていたのか?」
素にあっさり言う。
それを冗談で言っているのか本気で言っているのか、薫季には恐ろしくて決められない。いや、分かっていても口には出したくなかったが正解だろうか。
「なんか混んできたな……」
わざと話題を変えてみる。
「まあ、かなりのファンがついてきているみたいだからな。これくらいは当然といったところじゃないか?」
己の容姿のことをこの場で言ったこと自体は冗談だったようで、彼も直ぐに切り替えてくれた。
そのことに薫季は安堵(アンド)する。