SOUND・BOND
そんな少女の感情に全く気付かない薫季と秋司は、
「これほどレベルが高いとはなあ。正直期待していなかったんだが……」
「そうだな。あのアルペジオもプロ並みだと思うけど、この早弾きも桁違いだよな」
「他のメンバーとはスケールが違いすぎる。客もあいつに注目しているようだしな」
「AKI、行くか?」
「当然」
と、顔が期待に輝いていた。
この2人が一体何を話しているのか真空には理解出来なかったが、兄に関係していることくらいはすぐ感じ取れた。
何を企んでいるのだろう?
行く、とは兄のもとへ……?
それから一体なにが起こる?
未来への不安を抱えながら、真空は切り出していた。
「え、大丈夫?歩ける?」
「はい。ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
自分を降ろすように頼むと、案の定、彼は心配して声をかけてきた。
「迷惑じゃないよ、心配したんだ。こんなところに真空ちゃんみたいな女の子ひとりは危ないと思って。それに、あのギタリストと知り合いなんでしょ?」
知り合い、とはまた遠い言葉だと真空には思えた。
兄妹であるはずが無いとストレートにはっきり言われるのも悲しいけれど、遠まわしに否定されているような言葉も胸に何かがチクリと刺す。