SOUND・BOND
「あの人、真空のお兄ちゃんです」
彼は悪気があって言ったわけではないと十分に分かっていたから、自分の両足が地に着いた真空は笑顔でそう返してあげる。
もしそうでなかったら素っ気無く吐き捨てるように言っていたかもしれない。
「そっか、ごめんね。似ていなかったから、つい……」
「まあ、必ずしも似ていなければおかしい、なんて全ての兄弟に言えるものじゃないからな。いい兄貴なんだろ?」
全然話したことないけど、と言って反対側にいる秋司は柔らかく笑って寄こした。
今はライブを聴き入っているとばかり思っていたのだが、彼はこっちの話もしっかり聞いていたらしい。
しかし、全ての兄弟にという部分には少し引っかかりがあったが、真空はあまり深く考えないことにした。
なんとなく解かっていたから――
真空は満面の笑みで、
「はい!とっても」
と自然に返していた。
全てを話さなくても分かってくれる人もいることを知り、とても嬉しく思った。
薫季はとっても心配性で困っている人を見過ごせない。それ故に気付かない部分もあって……。秋司は周りや相手を見て悟るタイプ。人の考えていることを一番に理解し自分の心に留めてから口にする。
薫季が動いてくれるから秋司はゆっくり考える。秋司が冷静な言葉をくれるから薫季は思うように動いていられる。
この2人の仲の良さはお互いを補い合っているからだと真空には思えた。