SOUND・BOND
「その上容姿も抜きん出ている。きっとバンドやプロダクションからの誘いも多いだろうな」
「はいはい」
「なんだ?タキ」
「なにも」
「?……そんなヤツは大体陰で努力しているんだ。もちろん皆より劣っているから一人になった時でも皆に追いつくために練習するってのが一般的かもしれないが、実際はその逆も多かったりするんだよ。――兄貴は真空ちゃんの前でミスったりとかしたことあるか?」
そう言われてみれば……と真空は思い返す。
ストリートライブの時はもちろんのこと、部屋の中で真空が無理言って聴かせてもらう時も全然――…
「無かったです!」
「だろ?聴かせてやりたい相手には完璧なものを贈るんだよ。真空ちゃんみたいに可愛い子には尚更な」
「あ、はい……」
いつもこんな口説き文句を口にしているのだろうか。
何処からかいい香りがしてきそうな笑顔にこの台詞。他の人間がやったら引いてしまいそうだが、彼の場合は効果絶大だろう。
しかし、残念なことにこのメンバーでは上手くいかなかったようだ。
いつも綺麗な顔には見慣れている真空は〝ふ~ん〟で終わってしまい、自称?親友の薫季は彼の近くに居るせいで――言うまでもない。ただ、薫季は子どもは圏外ではなかったのかと突っ込んでやりたく思ったくらいだ。