SOUND・BOND
ステージ3

3-Ⅰ




アンコールも3回目にしてようやく落ち着いてくれた客席。
 
ステージを後にした陸燈は深く溜め息をついた。
 
結局妹の真空は見つからないまま、ステージから下りたわけだが……。


「陸燈っ。お疲れさん!これ出演料な。また何かあったら頼むぜ」
 

バンドのリーダーに声をかけられて、ハッと顔を上げる。


「あ、ああ」
 

どうしても真空のことが頭から離れなくて、曖昧な気の抜けた返事をしてしまう。


「どうした?なんかあったのか?」

「いや、なんでもない」
 

いつものように他人には素っ気無く接する。
 
少し驚いた表情を浮べたせいで相手も気になったのだろう。しかしいつもと変わらぬ対応をすると、彼も気にはならなくなったらしい。


「今回は初めてアンコールもらったからな。しっかりはずんどいてやったぜ!」

「それはどうも」
 

渡された出演料は確かに今までのものとは多少なりとも額が違っていた。
 
これから打ち上げをするらしく、その話にバンドが盛り上がり始めているところを陸燈だけは声を掛けてこないことを願いながら、知らぬ顔で帰り支度を再開する。
 
そろそろ弦の交換でもするかな、と愛用ギターを構っていると、


「陸燈もたまには打ち上げ来いよ。他んとこでも断り続けてるみたいだけど、なんか訳でもあるのか?」
 

タオルを首に掛けたドラムの男が訊ねて寄こす。
 
ささやかな願いは叶わなかった。


「べつに、興味がないだけですよ。早く帰りたいし」
 

真空が待っているからのんびりなどしていられない。


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