SOUND・BOND
陸燈はギターをケースにしまいながら続けた。
「また、何かあったら連絡下さい」
「ひとりでやっていくのも面倒なんじゃないか?いっそのことうちに――」
来ないかと続く言葉を否まで聞かず、
「一人が好きなんですよ」
の一言で遮る。
「それじゃあ俺はこれで」
と、あっさりした別れの言葉を何も言えずにいる彼らに掛けて控え室を出る。
誘いがかかることは何回もあった。だからそれなりにあしらい方も上達してきたことに、陸燈は微笑した。
しかし、その笑みもすぐに消える。
(真空……)
少女は裏口にいるだろうか。
自然と足はスピードを上げる。
自分の足音が妙に耳に響く。
そして、カウンターのすぐ脇に出る扉を開けるとまだ飲み足りないらしい酔っ払い客がまばらに残っているだけで、あの盛り上がりを見せていた女性客はほとんど見当たらなかった。
本当にここがさっき演奏したあのライブハウスなのだろうかと疑いたくなる光景だ。
それでも隅の方でこっちに視線を送る客はいた。
「ちょっと!あれ、陸燈だよねぇ?」
「きゃっ!ほんとだあ!」
「こっちに残った甲斐あったね」
そういえば、さっきここを出るようにと促すアナウンスが流れていたことを思い出す。
ここは演奏が終われば大体直ぐに閉めてしまう。
演奏者目当てで残る客ばかりで、なかなか帰ろうとしない客をさっとはらったのだろう。それでもこうやって留まる客がいて、店側も少し困っているようだった。