地球、最後だってさ。
拓也さんは私たちが振り落とされないようにスロースピードで車を走らせた。
荷台からの風は気持ちいい。
季節はまだ冬なのに温かい。
これが地球温暖化の影響なのだろうか。
私たちは無言で、遠くの山々の景色を見ていた。
絵理とルイが自分の家に帰り、私ひとりとなったので助手席のほうに座ることにした。
住野家と家が隣の私は最後。
そういえば、住野家の奥さん、千恵さんの顔を最近見ていない。
やはり妊婦さんだから家で安静にしてたほうがいいのか。
「久々に千恵に会う?」
刹那、心を読まれたのかと思った。
拓也さんが唐突に言ったからだ。
「千恵も俺以外の奴に会っていないから寂しがっているだろうし。
少しでいいから千恵のお喋り相手になってくれない?」
「いいですよ」
っと言ってから、それじゃあ私が嫌々引き受けているみたいじゃんっと思って
「私も千恵さんの顔を久々にみたいですし」と付け足した。
住野家に着くと、玄関に小さな灯りが付いていた。
まるで歓迎されているみたい。
前から思っていたが、ここの家は広くて可愛らしい。
隣のボロイ家とは大違い。
拓也さんはドアを開け、大きな声で「ただいま!」と言うと、
その帰りを楽しみにしていたのか「おかえり!」と満面の笑みで千恵さんが迎えてくる。
さすがラブラブ夫婦。
「千恵にお客さんを連れてきた。」
そう言って、拓也さんは私の背中を軽く押す。
千恵さんは私に目を移すと感激したように手で口を覆い、
それからすぐに「入って入って!」と笑顔で迎えてくれた。