地球、最後だってさ。
住野家は家の中も広かった。
洋風でところどころに二人で出かけたツーショットの写真がきれいに額縁に入り飾られている。
それもいつかスリーショットとなりたくさんの写真が飾られていくのだろうなぁと温かい気持ちで見ていたが
やがて残酷なことを思い出してしまい、写真を見るのをやめた。
千恵さんに案内されたのはぬいぐるみがたくさん置いてあるいかにも女の子という部屋。
すぐに知恵さんの部屋だとわかった。
「拓也がもうすぐしたらお茶を運んでくれるって。くつろいでいってね。」
「お構いなく」
祖母を家で待たせているので、そう長居はできない。
小さなテーブルの前で千恵さんは楽しそうに笑っている。
「久しぶりのお客さんだなぁ。」
ふふふっと私に微笑みかける。
「お腹の子、調子はどうですか?」
「順調よ」
そう言ってお腹を優しくさする。
その母親の眼差しを浴びる赤ちゃんはこの外の空気を吸うことはない。
虚しさと悲しさで私は次の言葉を失った。
「最近、外に出るのが怖くなっちゃったんだぁ…。」
彼女が漏らす言葉の意味がわからなかった。
すれがまさか彼女自身のことだとは思っていなかったから。
「私とこの赤ちゃん、人の目にはどう映ってるのかなぁって思っちゃって。」
苦笑する彼女に私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
彼女は自分が人に同情されているんじゃないと思っているだろう。
その人の一人が私だ。
子を授かっても、その顔を一目見ることがなく最期を迎える。
彼女を見たら人々はきっとその同情が生まれるだろう。
「私、この子を授かったことには後悔してないのにね。」
彼女の言葉は重さを感じた。
微笑んでいる分、心に秘めた彼女の決心がある。