優しい刻
ガラス張りの、この病院評判である暖かな日差しが心地好い渡り廊下で、私は空を仰ぎ見る。


看護師は

その手に患者の命を、心を預かっている。



私がこの一年で学んだことだ。

その手で、目で、耳で。
触って、見て、聞いて、感じなければならない。
声にならない患者さんの不安や苦痛を。

医師には出来ない『心の治療』が私達看護師の仕事。




青い空を見上げながら、私は私を叱咤した。

仕事を全うしない彼女達に異議を唱えられない自分が腹立たしい。快晴の青空は、そんなささくれ立つ私のくすんだ心を責めているような気がした。

毎回のように押し付けられる仕事や夜勤。それでも「嫌」とは言えない私は、きっと事なかれ主義の主任と変わらないし弱虫だ。

これ以上患者さんに申し訳なさそうに頭を下げさせ続けるには限界なのに――……



どうしても「だめだ」と言えない自分は、きっと誰よりも愚か。



大好きだった両親が付けてくれた『優美』という名に恥じるような生き方なんてしたくなかったのに



私はいつから、こんなに臆病になっていたんだろう。




『優しい』って、一体何……?



私は、一体どんな人間を目指して生きてきたの――――?



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