優しい刻
注文した後はずっと、この喫茶店に関する知識を佐々木さんから教えて頂いた。
心から楽しそうに話してくださる佐々木さんに、最近ささくれ立っていた私の心は解れ癒えていくような気がした。


「お待たせ致しました」


丁度話が一段落したところで珈琲が運ばれてきた。強く香ばしい香りが目の前にやってくる。
白いティーカップによく映える真っ黒な、けれど深みのあるその色はとても魅惑的。いつもはブラックで砂糖を入れるけれど、今日はこのまま飲みたいと思わされる。

「美味しい……!!」

「だろう?」

口をつけた瞬間充満する香りに安らいで、次の瞬間ほろ苦い味が口に広がった。今まで飲んだことのない、奥の深い珈琲。

私が目を輝かせて褒めちぎると佐々木は満足そうに頷いていた。



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