優しい刻
珈琲の余韻に静かに浸っていた時。不意に佐々木さんがティーカップを置いた。
「……優美さん。この老いぼれに、話す気はないかい?」
「え……?」
「あの歩道橋にいつも居たね。散歩がてらいつも気になっていた。何か思案げの様子だったから」
そんなことは……と私は否定しかけて、私は言葉を呑んだ。何故なら佐々木さんの目は私の目をしっかりと捉えていて、その瞳は何もかもを見透かしている様に感じたから――――
悩んでいた。――というより、私は。
「私……自分に失望していたんです」
ポツリと呟いた私の言の葉を逃さないようにと、佐々木さんは少し身を乗り出すようにして手を組み、テーブルに乗せた。
私はそれを見て何故か安堵し、全てを話してしまいたい衝動に駆られた……