優しい刻
私は、恵まれていたと思う。






私の両親はとても仲が良くて、とても裕福だった訳では無いけれどとても満ち足りていた。

幼い私は何故か両祖父母と疎遠で一度も会ったことの無いことに寂しがったりもしたが、両親はその分も愛情を注いでくれた様に思う。


けれど私の幸せな日々は

『私のせいで』

永遠に失われた。







「優美ちゃん!」

おゆうぎ会の始まる直前、幼稚園の先生が血相を変えて舞台袖にやってきた。
嫌な予感がしていた。先生のこれから口にする言葉は聞きたくないと心が叫んでいた。

「優美ちゃんのお父さんとお母さんが――――!!」

その瞬間、子供心に世界が色褪せたように感じたのは、今でも忘れられない。



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