優しい刻
片川さんをリハビリに案内し終えた私は、にやけた顔を隠すことが出来なかった。
“優しい看護師さん”
その素敵な、恋い焦がれた響きが胸にじんわりと染み渡る。
――喜びを噛み締めながらナースステーションに戻った私は、少しにやけ顔で席に着いた。
と、その時。
「如月さん!ちょっとお願いが――……」
駆け足でやってきた主任に振り返って、はい?と返事を返すと、少し吊り目の主任の瞳が驚いたように見開かれた。
「――何か良いことでも?」
普段他の看護師に関心の無い主任が私に聞いてきた。今日は槍でも降るんじゃないかと本気で心配になってしまった。
「いえ、ちょっと……ところで何か私に用事があったんじゃ?」
「あ!そうだった」
主任はハッとしたような様子で慌てる。そして手に持っていた大きめの封筒から二つに折り畳まれた紙を取り出した。
「上にずっと掛け合っていたの。水野ありささんやそれに引きずられている三人、計四名をどうにかできないか」
「え……?」