優しい刻
「初めまして。外科から交換研修に参りました、如月優美です。短い間ですがよろしくお願いします!」
「……同じく、水野ありさです。よろしくお願いしまーす」
深々と頭を下げる私の横で、水野ありさがけだるそうに髪を弄びながら挨拶をした。
内科の看護師スタッフ達は事前に彼女の話を聞いているようで、苦笑いをしながら顔を見合わせていた。
「よろしくお願いしますね、お二人とも。さっそくですけど配属を――……」
主任の『掛け合ったこと』
それは、外科と内科の交換研修だった。
「如月さーん!ちょっと来てー!」
「あ、はいっ!」
仕事の正確な割り振り。やる気に充ち溢れたナースステーション。私はその中で、一年程前、新米看護師だった頃に感じた希望を思い出していた。
内科は、私の勤務するこの総合病院の中で一番の評判を持つ科だ。
医師達の腕もさることながら、看護師たちの看護に対する姿勢が断然素晴らしい。
そんな内科を、主任は水野ありさ再教育の場に選んだのだ。